船/鈴木陽
 
まいぼろぼろになることもありそうだった。扉はなくノートのような構成をしていてどの頁も同じように縦書きに文字をそろえるための薄く細い線が一定間隔で引かれているが、それを無視して文字は蛇行していて、挿入されたように書かれている、小さな文字で埋まっていた。最初の頁から、前半はどれも埋められている。後半の頁は書かれていないこともあった。そのような余白には、ところどころに思い出したように誰かの言葉が綴られる。とりとめのない言葉どもが散乱し、自然に寄り集まったような連想の言葉がその日々の暮らしを構成する。そしてどの頁にも、書かれた言葉に重なるようにして文字が書き付けられる。その文字は、必ず、前に置かれたものを
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