沁みていく春/あぐり
 
知った
病院のシーツにくるまりながら
起きたときに出されたパンのやらかさと
わたしのまえでは泣かなかったおかあさんたちのかお
すこしずつ
わたしのなかに声が沁みていく


(おとうさんにたたかれたほほのあつさとまどからさしこんでいたあおいなつをわすれない)


2010年
絵がまた描けるようになってから二回目の春で
部屋のいちばん後ろの席でひとり泣いた
これしかないならこれをやろうって
からだじゅうがあつかった
オーバーヒートしたその夜には
いつだって新しい夢をみていた
すこしずつ
このゆびに熱が沁みていく

2010年
きみがまた傍にいてくれる一回目の
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