沁みていく春/あぐり
ものたちもみんなながれた
すこしずつ
肌のなかに夜が沁みていく
(おかあさんにしがみついてなきじゃくったあのしゅんかんにひびいたさけびをわすれない)
2010年
からだに不純物をとりこんでから四回目の春で
「人が多いと気持ち悪いんです」
「教室はわたしを押しつぶすんです」
電車に乗ることが多くなった
新しい学校にはなんにもなくて
新しい病院には現実があって
どちらへむかう途中にも
白線の内側で電車を待ち続けていた
すこしずつ
あたまのなかに白さが沁みていく
2010年
眠ることに失敗してから三回目の春で
どうしようもなくひとを傷付けたのだと知っ
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