我らが日々を荒涼とするのか、老兵よ!/真島正人
私は大人になった
私の体は
冷房の沁みのような
風に汚れ
私の瞳は
くすんでいた
私は叫び声をあげた
それが山彦になって帰った
私の遠い山は
いつも崩れていた
※
手のひらに砂はいらないと
友人の一人がつぶやいた
私は手のひらに
深い海が欲しかった
連絡網は
途切れていた
この世界と
私を結びつける紐は
薄くて美しい絹の糸だ
私は
欲しかった
電気とエーテルで
こさえられた鋼の
立体が
私はそれを
通じて
電話したかった
誰でもない
誰かに
※
朝が来て
私は起こされ
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