我らが日々を荒涼とするのか、老兵よ!/真島正人
 
私は大人になった

私の体は
冷房の沁みのような
風に汚れ

私の瞳は
くすんでいた

私は叫び声をあげた

それが山彦になって帰った

私の遠い山は

いつも崩れていた



手のひらに砂はいらないと
友人の一人がつぶやいた

私は手のひらに
深い海が欲しかった

連絡網は
途切れていた

この世界と
私を結びつける紐は
薄くて美しい絹の糸だ

私は
欲しかった

電気とエーテルで
こさえられた鋼の
立体が

私はそれを
通じて
電話したかった

誰でもない
誰かに



朝が来て
私は起こされ
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