我らが日々を荒涼とするのか、老兵よ!/真島正人
 
された

私の体には
水分が

空には
ちゃんと空が

あった

私の深い安堵は

私の体を伝い

この世界の湖に
沁みこんで行く

私が投げかけた波紋は
私という形たちをなして

そしてやがて同化するだろう

理を
書き込んだ
英知の書物が
すでに教えている

途切れ得ない暖かい波



こめかみが痛い

心が
疲労している

そして途切れた線は
私を締め付ける

なんだ、
目が覚めて改めてみると
これはただの
針金の線だ

私の大切な線は
別にある



我らが日々を
荒涼とするなかれ
老兵よ!

誰かの
つたない呟きが

投げ捨てられた!

ここは深い夜

漆黒の
波のさなかの
夜の小道だ

私は振り向いた

胸いっぱいの郷愁と
愛と
戸惑いをこめて
振り向いたのだ!

そこには誰もいない

投げ捨てられた
つぶやきだけが

宙に漂って
やがて消えた。

あぁ
これも

ひとつの愛だ!



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