我らが日々を荒涼とするのか、老兵よ!/真島正人
 
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目をそらした
愛の数は数え切れない

唇はいつも
濡れてふるえていた

恐ろしいもの
巨大なもののざらつきを

指先は認識していた

冷たい水の中に
氷を入れて

指を差し込むことに
似ているのだ

私はうれしかった
うれしくなるとなぜか
涙がこぼれた



でもそれは
ただの壁に過ぎなかった

壁の落書きは
日毎に変わっていった

変化と
変容

似ているようで違う
二つの言葉に

混乱するうちに私の
青春期は終わった



見えないものが
夜を切り裂いた

それは声でもあり
声でないこともあ
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