我らが日々を荒涼とするのか、老兵よ!/真島正人
{引用=
目をそらした
愛の数は数え切れない
唇はいつも
濡れてふるえていた
恐ろしいもの
巨大なもののざらつきを
指先は認識していた
冷たい水の中に
氷を入れて
指を差し込むことに
似ているのだ
私はうれしかった
うれしくなるとなぜか
涙がこぼれた
※
でもそれは
ただの壁に過ぎなかった
壁の落書きは
日毎に変わっていった
変化と
変容
似ているようで違う
二つの言葉に
混乱するうちに私の
青春期は終わった
※
見えないものが
夜を切り裂いた
それは声でもあり
声でないこともあ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)