ふりだしに戻るばかりの小さなさいころゲーム/ホロウ・シカエルボク
 
て俺の脳内は黒く塗られる
「もう航海になんか出られないかもしれない」と
言語脳に住む水夫たちが絶望の金切声、海は、海は
あんなにも圧倒的に俺たちを迎えてくれるのに
予定のない港に意味を持たない風が吹く、水夫たちは
身の凍るような冬に暑気当たりみたいな顔をしてばたばたと倒れてゆく
さよなら、さようなら、海…
薄暗い診察室の中でささやかなシステムがひとつ死んだ
新しい船があの港から出てゆくことはもうないだろう
鳩の糞を避けながら外に出て
色づき始めた花の香りを嗅ぎ
水夫たちの悲鳴を思い出して大笑いした、もう航海なんか、もう航海になんか…!
いっぱしの、船
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