さようなら、過ぎ去った日々よ/ホロウ・シカエルボク
 
返すが
景色は変わることはない
いまこの身を蝕むもの、おれはそれに
名前をつけることが出来ない、それはあらかじめそのように
設定されてこちらに投げ出されるらしい
首を何度か横に振ってみたが
景色は
変わらなかった
マリア・カラスの殺傷事件のような歌声
じっと耳を傾けていたら横隔膜がこそばゆくなった
受け止める底のない
砂時計のような喪失のしかた、それが本当になるのは
砂がすべて落ちてしまったあとからのことだ
おれの言葉のことを誰か記憶しているか
おれにとってそれはすべていちど忘れてしまったものだ
おれの言葉のことを誰か記憶しているか…?
IDが抜けおちたら世界の暮ら
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