日蝕/salco
ある夏の日盛り、
少年は縁側で西瓜を食べていた
ふと、
太陽に西瓜の種ほどの翳りを、
極く僅かな変形を認めた気がした
気にもかけずに少年は
浴衣の足をブラブラさせながら食べ続けた
10分と経たぬのに
日は青空の中でどんどん翳り始めた
月のように欠け始め
やがて半月となり三日月の細さとなり
繊月となって、
ついに
真っ黒な太陽が光輪を連れて出現した
辺りは不思議な闇と静寂に包まれ、
不自然な夜の上には
ネガフィルムに焼きついた太陽
しかし皆既日蝕はいつ迄経っても終わらない
太陽は2度と、その伏せられた黒い皿から
出て来はしなかった
急に不安になって、彼
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)