眠りの子は/詩片/乾いた海のような/詩片を好んだ/ヨルノテガム
 
せた

車を運転していたミイラが交差点で危うく人をはねそうに
なったよ、と安全運転を身にしみて実感したようで
腕の包帯に「左右確認」というメモ書きを染み込ませていた

女の唇を確かめた日 あまりに柔らかくて
不覚にも記憶が飛び立って行ってしまった
それからというもの巨大な唇が空に浮かんで
視界に停泊しつづけた

泥棒が寝巻きに着替える
泥棒が歯を磨いた
泥棒は欠伸をもらして布団に横になった
また欠伸する
寝呆けながらそれでも泥棒の仕事に向かう
過労死した(泥棒の過労死!!)
重い何かが背中から外れなかった
大地が泥棒を所有し始める
身近な何かが失われ 見慣れな
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