タイムカプセル/窓枠
 
 十年? いいや

もう少しだけさかのぼって
私があたしだった頃に埋めたもの


放課後の校庭の隅
老いぼれ花壇のど真ん中
誰にも相手をされなければ
景色の一環とも見られない

忘れ去られた場所にこそ
約束と思い出を残してやりたかった

時が過ぎても変わらなかったのは
私との約束をかたく黙して
ずいぶんと長生きしてくれてたのだろうね


老人を労わるような手つきで
ゆっくり掘り起こして
置き去った黒歴史をすくいあげるよう
かつておばあちゃんのせんべい缶だった
愛しいスチールの冷たさに熱を宿した

ひとたび蓋をあけてしまえば
あたしの顔でほくそ笑む
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