子供たちの世界/真島正人
水。
真夜中になり、周辺がぼぉっとしてくると、僕はいつの間にか一人になっていた。足取りも軽くどこかに消えていった大塚は平均値のような幸せを纏っている。僕はただ、前かがみになり呼吸をしているだけで、いったい自分の何が自分を不幸せにしているのか、よくわからなくて、わからなすぎて心臓がバクバクとする。僕の父親は、「毎日心臓がバクバクする」と言った。僕が寝たことのある年上の女も「毎日心臓がバクバクする」と言った。僕の祖父は心臓の手術をして、それからなぜだか歩けなくなった。僕はやっと人並みの心臓を手に入れ、それがためにこんなにも『バクバクとする』。僕は、あごを何気なく撫で、無精ひげの感触を味わい、周辺
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