花の名前をおぼえられない/角田寿星
名前の知らない鳥がどてっぽーと鳴いてる
ぼくは無言で
たあくんはぼくの知らない歌を小声でうたっている
ページを開きっぱなしの本や
封をきらないまま積み上げてる専門書
のことを思いだす
ぼくはつまりそんなふうにして今まで生きてきた
近所のちいさな公園は愛犬家たちの社交場になってて
ちょっとしたドッグランの景観で
すごく楽しそうだ
ぼくの知らない近所の人たち
どこかの子が怪我でもしたのか
なけなしの遊具がまたひとつ撤去されてる
たあくんは犬がこわくて
公園に入れない
両手で耳をふさいだまま立ちつくしている
ぼくはたあくんの肩に手をやって話しかける
ぼくは
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