花の名前をおぼえられない/角田寿星
 
くは知っている
耳をふさぐたあくんのしぐさは
気持ちを落ちつけるサインのひとつで
ぼくはそれだけを知っていて
たあくんの視線はぼくの知らない空間を見つめたまま
固まっている

公園を背にして ふたり
もう慣れてしまった舗道を歩いていく
たあくんが手をつなごうと右手をぼくに差し出す
ぼくはたあくんを見ないまま左手で
たあくんのちいさな手を しっかりと握りしめる
あたたかい ひざしが


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