高野山物語/済谷川蛍
家に帰ると、爺さんが節々が痛むと言ったので身体をさすってやった。爺さんから、お前には生命を慈しむ優しい気持ちがあると言われた。
次第に雨の日は雨の日の部屋に、寒い夜は寒い夜の部屋になっていき、ヒーターをつけるようになった。爺さんの力が衰えているのだ。犬の話をした。飼っているといったが、だいぶ昔に死んだのだった。自分独り取り残され、離れ離れになってしまった。高野山を探し回っているのだった。
いつか「また逢えるさ」と呟いた爺さんの言葉を思い出した。「どうやって?」
パソコンをつけなさいと言う。
随分時間がかかって、デスクトップのかわりに犬が現れた。2人とも嬉しそうである
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