言葉だけがむなしく響く。/真島正人
 
ない閉じた人間だ



閉じた一人の人間が何かを訴えるとき

この口は硬直し泡を吹き細々とした音を搾り出すだろう



夕暮れまであと少しならば

夜が来るのはもっと早い



慰めを辱めと取り違えたからあなたは救われなかったのだ



口先だけが語る言葉を私は信用しない

多くの批評は本来それそのものがただの芸術に過ぎない

最大の問題は

強い言葉を語る人種がその言葉の強さに酔う自分自身を想像できないことだ



大きな河がある

河を見ていると泣きそうになる

河のほとりで生まれたわけでもないのに




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