労働/攝津正
「閉店休業」中の店、Cafe LETSを、プロのモダンジャズベーシストの立花さんと、あかねで一緒に当番をやっていた行政書士のゆっくすさん、早稲田大学のサークルで知り合って以来の付き合いのタニケン君が訪れた。立花さんと会うのはほとんど十年振りである。この再会は攝津を甚だしく緊張させ、著しい不安を強いた。攝津のようなトンデモが、プロのミュージシャンとセッションだなんて! そんな事があっていいのか! 攝津は自らの資格を疑問に思い、卑屈になった。攝津は饒舌だったが、不安が饒舌を裏打ちしていた。
母親、父親も混じり、家族ぐるみで楽しい会話が弾んだが、攝津は不安だった。気が狂いそうだった、と言ってもいいだ
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