労働/攝津正
事だった、と攝津は思った。
NAM原理の本が出た時に、朝日新聞の書評欄に取り上げられ、パロディなのか、と書かれていた事に、当時既にNAM会員であった攝津は、自分らは真剣なのにパロディとは!と憤ったが、これは憤るほうが間違いであった。冗談と思われても仕方が無い部分が確かにNAMにはあった。いずみちゃんはNAMを、柄谷行人のマスターベーションと言っていたが、柄谷行人のみならずNAM会員全員の自慰であったのだと攝津は考えた。各人が、勝手な妄想を抱いて入会し、結局何も出来ぬまま自壊した。ただそれだけであった。馬鹿が集まって馬鹿やらかした、それだけの話だった。善意は何の救いにもならなかった。善意は無力だ
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