労働/攝津正
 
ねた場合の後遺障害などが怖かった。要するに攝津は凡人だった。生きる意欲や気力があるから生きているのではなく、死ぬ勇気やエネルギーがないから生きているだけの、消極的生存者だった。
 攝津には普通の人のように働く事も生きる事も無理だった。生活保護や障害年金を貰うのも無理だった。どうしようもなかった。行き詰っていた。
 何かが攝津の中で爆発した。
 攝津の中で何かが終った。
 攝津は最早生きたいとは思えなかった。攝津は死にたかった。ただひたすらに、死にたかった。だがどうにもならぬ。それもよく分かっていた。
 出勤ももう出来ぬのではないか、と攝津は考えた。退職するか。
 退職して、どうする。
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