労働/攝津正
人間失格』のラストを想起した。『人間失格』を読み返したいと思った。自分も恥の多い生涯を送って来たと思うからである。生きている事自体が恥ずかしい。際限も無い欲望、CDが欲しいという欲望を自制出来ぬのも恥ずかしい。三十四、五にもなって自立するどころか両親に迷惑ばかり掛けている事やパートタイマーとは言え就職していても会社や同僚に迷惑ばかり掛けている事も恥ずかしかった。これら全ての事からして、攝津は直ちに死にたかった。だが、死ぬ方法が分からなかった。高いところから飛び降りればいい? 電車に飛び込めばいい? そのようにして肉体を完璧に破壊するというイメージは攝津を畏怖させた。攝津は一瞬の痛み、もし死に損ねた
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