労働/攝津正
 
と恐ろしい。ともあれ、一年以上賃労働肉体労働を継続出来ている事に素直に感謝すべきだ。全く有難い話だ。攝津のような鈍で無能な人間を雇ってくれるなんて! 攝津は鈍で無能でおまけに精神病ときている。こんな人間、普通雇われない。実際、個別指導塾を退社して後就職活動をしたが、どこの会社からも断られた。全部、駄目だった。それで攝津は自分にも社会にも絶望していたのである。
 そんな自分が、きつい仕事ではあるが、働く事が出来るというのは僥倖に思えた。感謝の念にたえぬ。攝津は働いている時自分の居場所に居るという感じを抱いている。尤も欝・不安・パニックの時はそれが急によそよそしい不気味な感じに変るのであるが。

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