労働/攝津正
思った。攝津には、自分自身が、ただ一人自分だけが問題なのだった。攝津には、自分は我儘であり、我儘であるより他ありようがない存在なのだと思えた。
攝津はその日、佐々木病院という精神病院の診察日で、T先生という若い医師の診察を受けた。攝津が前田さんに印刷して貰った精神科メモと『労働』草稿を手渡し、仕事で悩んでいる旨訴えると、ソーシャルワーカーと面談してみては、と言われ会ってみた。
ワーカーさんは中年のおじさんだった。名前失念。三十分以上話したと思うが、不毛な対話だった。簿記やパソコンの資格を取得しても、事務職は希望者が多いので経験者から採用する傾向にある、との事。予想はしていたが、当然の如
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