詩が沈黙する時/岡部淳太郎
と言うのではない。詩の本質とその歴史を見据えた上で、詩を考えることが肝要であると言っているのだ。
私たちの生はその多くを詩ではないものに負っている。北川透の言葉を借りれば、「反詩」であるが、私たちは詩を書きながら、詩に憑かれながらも、世界中に溢れるそれらの詩ではない「反詩」的なものに多くを負わざるをえない。それが現実である。人が一生を過ごす膨大な時間の多くで、詩は沈黙している。沈黙して、詩があるということを人に忘れさせてしまっている。本来、詩は世界に遍在しているのではないかという多少夢想じみた考えを私は支持するが、いかに世界が詩で満たされていようと、人はそれに気づくことはほとんどない。仕事帰り
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