詩が沈黙する時/岡部淳太郎
 
詩ではないものの中で生きているのだ。このことを忘れてはならない。問題は、詩と詩ではないものとをどうやって摺り合せてゆくかであって、その狭間を考えることがひとりひとりの孤独な書き手に求められている。そうした中で、詩は現実を一瞬だけであっても変えるものになれるかもしれない。この少々ロマンティストじみた考えが古臭く見えながらもいまなお息づいているのは、社会が詩を疎外してきたという歴史が現実にあるからであり、それはいかに民衆の歌をうたおうが、また言語実験に没頭しようが、変りなく詩を覆ってきたのだ。世界と同調するのではなく、世界を裏側から逆照射して真実を炙り出すような機能を、私は詩に求める。それは最初に書い
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