錆びた時間の牙/ホロウ・シカエルボク
 
追われたんでしょう、さっき?」
俺はひとつの窓を開けてその部屋の中に入った、部屋の中には男と同じようにくたびれた中年の女がいた、おそらく奥方だろう…俺は潰されている窓の前に置いてある様々なものをじっくり検分してから、すべてをそこからどけ始めた、奥方と男は無表情な顔で俺のすることをただ黙って見ていた、止めることも、怒ることも、悲しむこともしなかった、そこからすべての家具を取り除くのに一時間ばかりかかった、だがまだ夜は明けず、部屋の中は陰鬱だった
閉ざされていた窓のカーテンを開け、窓の鍵を開け、窓を開けた、冷たく湿った空気が部屋の中になだれ込んだ、凍てつくような気温だったがその部屋にこもってい
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