錆びた時間の牙/ホロウ・シカエルボク
 
って、俺は何かから逃げていた、すれ違ったときにはただの人間だったんだ、(こんな時間に何をやっているんだろう)怪しく感じるとしてもせいぜいそんなぐらいのさ
すれ違った瞬間に俺はそれに気づいた、やつの関心を引いてはまずいことになる、やつの視界に長いこと居てはまずいことになるってな、だから壁に上って逃げようとしたんだ、ところがやつは向きを変えてこちらにまた歩いてきた…凄まじい速さだった、だけどまるで急いでいないんだ、不思議なくらい無表情な歩いているだけの足音が誰も居ない道にこだましていた、俺はどんどん道の奥に逃げて…ある路地の奥の一軒の家で行き止まりになった
真夜中だったせいかもしれない、真夜中
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