はなび/木屋 亞万
まった
それでも女の温もりと肌の柔らかさは消えなかった
目を閉じていても女のミルクティのように白い肌がまぶたの闇に浮かんだ
女からは乳の匂いがした、それは赤ん坊の枕の匂いに似たものだった
女の髪が海水に濡らされるたびピチャピチャと鳴った
女はピクリとも動かなかった
どうしてよいかわからないまま
男は女に身体を密着させ、胸に顔を埋めていた
やがて水平線が白み始めた
ハナビ、と女は言った
声が震えていた
男はハナビがないと大変なことになる気がした
しかし女の元を離れたら、もう女とは触れ合えないだろうという予感もあった
男はハナビを捜し始めた
砂浜に落ちているハナビはどれ
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