緑に覆われた世界を垣間見た。/影山影司
 

 それからの話に意味はなく、酒の肴の代わりにしかならなかった。
 やがて私の意識もまどろみに転び、店主に金を払うと、よたよたと船に戻ってすぐに寝てしまった。

 船旅は暫く続いた。
 進んでも進んでも、周囲の風景は変わらない。川岸には針金束のように弦樹が軋み、詰まっていて、その合間にはプラーンコーンの太い幹が伸びている。空も雲を数えるより、プラーンコーンの葉を数えたほうがいい。川の匂いを嗅ぎながら、葉の影に隠れている間は呼吸を止めたりして暇を潰した。誰かと話そうにも、他の連中は皆、薬でずっと眠っている。時折体を動かしている以外は、死んでいるようなものだ。
 あれから時折ウォッカのことを
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