緑に覆われた世界を垣間見た。/影山影司
 
らは橙の光が漏れていた。壁面には赤い防水塗料の『飯/酒』の文字。班長に従い中に入ると、湿度の高い熱気と、地方独特のスープの香りがする。中は大テーブル(といっても十人程しか座れないが)、カウンター席、それと簡単な調理場だけの質素な作りとなっている。他に客が二人、店主が一人。班長はカウンター席に座ったが、隅のテーブル席へ座る。店主に麺料理と度数の低いガスアルコールを頼んだ。
 雨はますます、勢いを増して飴玉を撒いたような音を鳴らす。カウンターにいる客は突っ伏して動かないが、この雨音の中で眠り続けているのであれば大したものだ。と、見ると班長も半分空けたグラスを手に、頭が舟を漕いでいる。店主は黙々と腕を
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