緑に覆われた世界を垣間見た。/影山影司
 
ァちゃんと現場連れてったるわ。俺? 俺は寝ねェよ。お前らンと反対の奴飲ンでっからな。先長ェからな、寝ねェンならここで飯食っとけ。腹ペコの船旅はキツイぞ」
 班長の声は幾らか酒の匂いがある。泥酔するほどではないにしろ、熱い酒の二〜三杯も飲んでいるだろう。不眠で酔っ払いの船になんぞ乗って、睡眠薬を飲むには随分勇気がいる。やはり薬は飲んだ事にして、川に捨ててしまうのが正解だ。ベルトも緩めておいた方が良いだろう。
 あいまいに笑うと、パラリと雨粒が降ってくる。
 撥水加工の幌が敲かれて、軽やかな音が繰り返す。班長が舌打ち、「お前も入ェれ」と手招きした。向かう先には祭事用天幕が張ってあり、入り口からは
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