暹羅の青い猫/楽恵
しがアユタヤの王宮で暮らし始めてはや2年
貴女は毎晩のように小さな手のひらを合わせて御仏に祈る
いつもそうやって何を祈っているのですか?
父王に可愛がられ多くの従者に仕えられ
この国で一番豊かで幸福そうな貴女
なのに
揺れる蝋燭に照らされた貴女の横顔にうつし出される苦悩は
何故だか日々深くなっていくばかり
誰の為に祈っているのですか?
貴女、わたくしのような小さな愚猫には
人間がこの2千年御仏に祈り続けていることの意味が分からないのです
万民を救う御仏の慈悲とは何でしょう
それは貴女を苦しみや悲しみから救ってくれるのですか?
愚猫のわたくしにできること
夜通し祈り続ける
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