「えいえん 佳子1997 冬」「鳥の唄 2000 冬」全面改定版/ダーザイン
 
り込み、足を宙空にぶらぶらさせながら彼らの様子を見守った。背中を丸めたその男の横顔は、呟いているのか唄っているのか、或いはたぶん呟くように歌っていたのだ。どんな歌が唄われていたのか私には聞き取ることが出来なかったが、あまねく引かれ者の小唄には、遥かな空の青みの向こう側の何者かに捧げられた旋律、えいえんが宿っていたはずだ。都市の喧騒の中に一瞬訪れた静寂の中に、私は確かにバッハを聞いたような気がした。
 その時だ、彼の肩の上の小鳥が飛び立ったのは。周囲の喧騒を越えてひときわ高く通る透き通った声で唄いながら、鳥はどこまでも高く、高く飛翔する。時折風に吹かれて流されながら、何処までも、何処までも。もはや
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