「えいえん 佳子1997 冬」「鳥の唄 2000 冬」全面改定版/ダーザイン
 
けではあるまい。それにしても奇妙な眺めではある。どちらを向いても見渡す限り電飾に縁取られた巨大な商標が折り重なるようにして連なっている様は、何か形而上的な感興をもたらす。鳥たちにのみ解読されうる識域下のメッセイジ?
 或いは単にカラスの巣か。
 そこだけ一段低い北隣のビルを見下ろすと、屋上にペンキの剥げかけた緑色のベンチがあり、初老の男がぼんやりと座り込んでやはり空を見ている。彼はこちらには気付いていない。くたびれた背広の肩に小鳥が一羽舞い降りる。
 プーティーウイッツ、小鳥が鳴く。
 呆けたように放心の態の彼は、気付いているのかいないのか、一向に気にする風がない。私は再びビルの縁に座り込
[次のページ]
戻る   Point(3)