「えいえん 佳子1997 冬」「鳥の唄 2000 冬」全面改定版/ダーザイン
 
、今日は妙に優しげな色をしていたので、あの空の下で一服しようとここまで来たのだ。
 開けた所まで来て良く見ると、空の青みの前にうっすらと白いガスの層があるのがわかる。昼過ぎだというのに、丈低く登るこの時季の陽光は弱く、ガス越しでは直視しても目を痛めることは無い。太陽の周りには虹色の光の輪が出来ていた。いくつもの小さな雲の切片がちぎれては流れていった。
 このあたり市心一帯にはほぼ同じような高さのビルが林立しており、それらのビルの屋上には一様に巨大な広告塔が設置されている。街路を行く者には、それら頭上の宣伝文が目にとまることなどまず無いのだが、まさか酔狂な屋上の散歩者のためにのみ設置されたわけで
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