「えいえん 佳子1997 冬」「鳥の唄 2000 冬」全面改定版/ダーザイン
 
た。彼女の触手、白い杖が、人波を二つに分けて巡航していく。一丁先の交差点で彼女は足を滑らせて尻餅をついた。周囲の人々に助け起こされ杖を握らされると、頭を垂れて礼をした彼女は再び北へと歩き始める。小さな桜色の帽子の人影はすぐに人ごみの中にまぎれて見えなくなった。
 どこから来てどこへ行くのだ、君は。
 ふと思い立ち、巨大な飛び込み台の縁に立ち両手を広げてはたはたと飛ぶ鳥の真似をしてみる。風がコートの裾を旗のようにひるがえす。何を馬鹿な真似をしているのだと思うと、久々に乾いた笑いが唇に浮かんだ。失業者ではあるが、死ぬには良き日だなどと思ってここまで上がって来たわけではない。下で見上げた空の青が、今
[次のページ]
戻る   Point(3)