【批評祭参加作品】うたう者は疎外する/される/岡部淳太郎
いまだ名づけられざるものへの恐怖心の、二つの心理が働いている。自らが名づけられてあることへの安心感というのは、名づけによって得た地位を誇り、それをいまだ名づけられざるものに対してひけらかすという行為に結びつく。そこには自らの地位を失ってしまうかもしれない恐怖心が常に裏側に貼りついており、そのためになおいっそう名づけられていないものに対しての酷薄な態度となって現れる。いまだ名づけられていないものは、自分が得ている地位を脅かし、それに取って代わる存在であるかもしれないからだ。同時に、そこには名づけられないものそれ自体への恐れも平行してある。名づけというのは世界の混沌を整理し、秩序立ててゆこうとするもの
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