【批評祭参加作品】うたう者は疎外する/される/岡部淳太郎
 
い殺すということが洋の東西を問わずあったが、あれも相手の名前がわからなければ呪いの効力を発揮することが出来ない。相手の名を知ることではじめて、憎悪対象の死という結果を所有することが出来るのだ。つまり、名づけるとは混沌に形を与えるということであり、混沌を混沌のまま所有することは不可能であるから、(社会の中で)生きるために人は事物に名を与えるのだ。そういう観点から考えると、社会の周縁部に追いやられたマイノリティが無名性を帯びるということは、それによってますます社会から疎外されるということになる。人が名づけという呪的な力から離れると、ある「無縁」の感覚に捉えられる。思いきり噛み砕いて言ってしまえば、それ
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