アスラエル/チアーヌ
 
らせてくれるだけだった。
 俺がいくら水が欲しいと訴えても、
「口から水を飲んだら死んでしまうのよ」
 などと妻は涙声でいうのだった。
 全然わかっていない。
 どうせもうすぐ俺は死ぬっていうのに。水を飲んだら死ぬっていうけど、飲まなくたってもうすぐ死ぬんだ、それでも飲ませてもらえないのか。
 しかし俺にはもう、妻にそんなことを訴える体力も気力もなかった。
 眠っている時間が多くなった。
 起きてもただ目を開けているだけだ。
 目を閉じていれば眠っているようにしか見えないらしく、あるとき、見舞いに来たらしい兄貴と妻の会話が聞こえてきた。
「式場の下見なんかは済ませましたか」

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