【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
たような気分で階段を上り続けていると、山林からは鈴虫の音が聞こえて、それは上れば上るほど大きくなってくるようだった。
あたしは自分の名前がわかんないけど、忘れているから覚えなきゃいけないのかな。「わたし」は「もう覚えることをしたく」ないらしいんだけど、それってなんでだろう。「うしろからいつも逃げたくなる人」って順番に並んだ列の最後尾から逃げたくなる人のことか知らん、過去から逃げたくなる人のことか知らん。なんも知らん。「やさしい挨拶」だってなんも知らん。
リンリン、リンリン、リンリリン、
リンリン、リンリン、リンリリン、
「わたしの家には出口が一つしかありません」ので、「
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