【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
ていますか?
東京のはずれで
わたし、あなたがしあわせに
今日も明日も生きていることを知っているんだよ
(巴里子「町子さん」全文)
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もうずいぶん階段を上った。いつの間にか鈴子はあたしのはるか前を歩いているし、いつのまにかyumicaはあたしのはるか後ろで腐ってる。しかたがないので上り続けるけど、どこまで上ったら鈴虫寺につくのかわかんなかった。
階段の両脇は山林になっていて、お月様に照らされて雪化粧の木々は震えている、その間で時折白衣を着ているおっさんがちらりちらりとこっちを見ていて、あたしを追いかけているように見えるので、あたしは足早に階段を、
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