【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
の吐き出した煙草の煙がわっかになって飛んでいく。鈴子はそれをひょいとよける。こういう動きが「ポエム」って言うんじゃないの?あたしにはわからなかった。あたしにもわかんないよ、と言って鈴子は手にしていた本をあたしに投げて寄こした。そこに書かれているものが「ポエム」らしいのだが、そこに何が書かれているのかまるでわからなかった。
置き去りにされていたyumicaの死体が腐乱し始めた。あたしはそれを呆然と眺めていたが、鈴子が歩みを止めないので、煙草を咥えたまま一足飛びで階段を上った。
「ポエム」ってのが、「そこに何が書かれているのかまるでわからない」という条件を満たしているものだとしたら、そ
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(15)