【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
が詰め忘れた一枚の下着のほつれを
機織りで補修している、あたいは出来上がるのをそばで待って、知らないうち
に眠ってしまった、機織りの音が鳴り止むと、あたいは目を覚まし、下着がす
っかり元通りになっていた
あたいは鈴木とつまるところで恋人っぽく抱き合った、鈴木はがらにもなく照
れてあたいは幸せだった、あしたはあたいが生まれた日だよって言うと、鈴木
は恥ずかしそうに笑った、なんでそこで恥ずかしがるのよとあたいは鈴木を問
い詰めた
なんにも経験していない青春時代を思う
ばかばかしくて楽しかった そんでとても素敵で若かった
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