【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
い言い訳にしたりしなかったりするの?
階段を上りきると鈴子はあたしの煙草で一服していた。大量の鈴虫が上り終えたばかりのあたしに襲い掛かる。リンリン、と視界が真っ黒になるほど顔中に鈴虫が張り付いて、皮膚を引っかく六本の脚が気色悪い。舌が乾く。体中を、リンリン、鈴虫が、リンリリン、張り付き、リンリン、鈴子は、リン、わっかにつかまって、あたしの顔をしながら、リン、鈴虫まみれの、リン、あたしを突き落とし、リンリリン、
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あたしは階段を転がり落ちていく鈴子を見下ろしながら一条さんって人の作品を考える。
誰が呼びはじめたの知らないけど「一条様式」って言葉を目にしたりして、そ
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