赤の缶詰/杠いうれ
 
グに降りると
気味が悪い、と鋏を手渡された


朝食の匂いを振り切り最寄駅まで出てみるが
そのようなつもりはないけれど高揚しているのか他人の視線も捕まえられず
そういや毎日挨拶を交わすクリーニング屋の店員にも声を掛けられなかったし
悔しい気すらしてきたので 駅員に列車の時刻でも訊いてみようかと
階段のした2号車の辺りまで来たところで
爪先に何かが当たり それはごろりと転がった


鷺ノ宮まで、止まりません。
女の声で自動アナウンスが流れ
いつもこのアナウンスはどこか切実そうに聞こえるのだけど
それは 止まりません がまるで 止まれません のような表情であるからなのか
[次のページ]
戻る   Point(1)