【批評祭参加作品】客観描写ということ(高浜虚子)/古月
ている。
「一片の落花を描き、一本の団扇を描き、一茎の芒(すすき)を描き、一塊の雪を描き、唯片々たる叙写のように見えていて、それは宇宙の現象を描いたことになる」という虚子の境地に至ることは到底容易とはいえないが、わたしたちはこの精神を忘れずにいたいものである。
「感懐はどこまでも深く、どこまでも複雑であってよいのだが、それを現す現実はなるべく単純な、平明なものがよい。これが客観描写の極意である。」
平板ではなく、平明ということ。この両者の違いをどうか、考えてみていただきたい。
あなたが向き合う対象がもしも形のない心の中の風景だとしたら、この客観描写ということは想像を絶する
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