だからといってそれが冷めてしまうまでここでこうしているわけにはいかないのだ/ホロウ・シカエルボク
えないほど遥か彼方からやってきたバスが
乗る気もないのに立ちつくしている僕に警笛を鳴らしながら通り過ぎてゆく
僕らはまるで際限なく砕けて
世界の端と端へ飛ばされてしまった枯葉のようだ
どんな神がそれをかき集めてみたところで
正しいかたちに戻るためには足りないものがいくつもあるのだ
市場の隅でひっそりと客を待っている
ブレッド・コーナーの伏目がちの男に話しかけて
チリ・ドッグとブラック・コーヒーを買った
男は数秒後には気のせいだったのかもしれないと思えるほどの小声で
マニュアル通りの言葉を吐いて読んでいた本に戻った
「ヘミングウェイ短編集」とその扉
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