滑った感じ/八男(はちおとこ)
くちゃえげつない可愛らしい女の子だったら、どんなに良かったろうと思うと、溢れた涙がこぼれてきた。すぐさま、おっさんに気づかれないように、手で拭った。
「山羊んとこ行くかぁー」
ティピから、徒歩数分の畑に柵があって、山羊が三匹、のそのそと動いていた。ビー玉のようなその瞳の奥には、哀しみのようなものが感じ取れなくもなかった。山羊というよりは、山岳の少数民族のようにも受け取れた。
「ええもん見せたろか」
おっさんはそう言って、左腕で山羊の前足ニ本、右腕で後ろ足ニ本を掴み、暴れる山羊を押さえ込み、乳にむしゃぶりついた。
「ん、ん、ん、」
乳飲み子のようで、追い剥ぎのようにむしゃ
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