滑った感じ/八男(はちおとこ)
 
きた。おっさんは第二弾の古典落語「デビューした頃のタモリ」を語り出した。この噺も飽きさせないもので、ハナモゲラ語なんてネタを実演して見せてくれて、こんなネタ、見たことなかった。
 
 たしかに、一緒に旅をしていた頃は意気が合っていた。それは、私もテンションが高かったからかもしれない。若さと旅の興奮に、おっさんのテンションが、私のテンションを触発させたのかもしれない。少なくとも、おっさんといた間は、それが持続していた。
 しかし、十年たった今、私もすっかり落ち着いてしまった。どう触発されようとも、上がらないテンションというものが備わってしまっているのだ。たとえ隣でロックコンサートを贔屓のグルー
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