滑った感じ/八男(はちおとこ)
る」とは思わなかっただろう。たぶん、「えらい嬉しそうに走っている人」と、そう感じただけだろう。だって、私は、にこにこしていたから。
そろそろおっさんがしびれを切らしているんじゃないかと思っていた矢先、携帯に電話が入った。
「な、なにしとるんや!は、はよこい!」
訥弁と勢いが混じっていた。そのまま走り、息を切らせながら、ティピの中へ駆け込もうと思ったが、入り口が小さく、急に私の動きはスローになったので、過呼吸ぎみになった。
「頭の上、煙突あるで気をつけいよ!火傷するぞー。」
全面、白いキャンバスが張り巡らされてあるティピの内部の中央には、ストーブがあって、そこから煙突が伸びて
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