滑った感じ/八男(はちおとこ)
も、もう止んでいた。
携帯で電話すると、中にいるから入ってこいとおっさんが言った。田んぼの上にティピがある。それだけである。だからすごく落ち着いている。ティピが静寂をつくっている。ティピの屋根のような部分から、煙突が貫かれていて、もくもく煙が上がっていた。その光景は、実に生活感があって、生活感とはこうも静かなものなのかと実感させられる。ティピとは、「それだけ」だけの存在で、それでいて、完璧だ。
おっさんに会う直前になって、ティピを目の前にして、久しぶりに会うのがとても嬉しくって、でもなんだかまだ会うのが怖くなってきて、そわそわうきうきしてきたので私は走り出した。ティピの田んぼに
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